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賞味期限

今日のタイトルは「賞味期限」ですが,何も食品疑惑の話をしたいわけではありません.昨日・今日と続いたノーベル賞受賞の関連です.南部・益川・小林の3先生のお仕事,それから化学賞の下村先生のお仕事,いずれも30年,40年前の仕事です.むろんそのことにケチを付けているわけではありません.むしろ逆で,30年,40年前のお仕事が今まで寿命を長らえているということに,大いなる敬意を表したいと思っています.これらのお仕事は見事にサイエンス的知見のストック情報として生きています.

翻って私の関連している情報科学,情報システムの世界を考えると,サイエンス的知見がドンドン消費されています.世に「サイエンス型産業」という言葉があります.バイオ,ナノテク,マテリアル,情報科学などがその代表と言われています.これらの産業は「サイエンス的知見と実際の製品までの距離が短い」という風に考えられます.言い換えればサイエンス的知見がすぐに製品化されるということです.むろん一つの製品が長期間愛用されることもあるでしょうが,通常製品というものは比較的短期間で消費(使われなくなる)されます.一方サイエンス的知見は人類の共通財産であり,その価値は不変のものだと言えます.

先年無くなった森嶋通夫氏の著書「思想としての近代経済学」の中で,氏は「学説はいったん発表されると,学説の時間的順序とは関係なく,すべてが一つの袋に入れられる」という趣旨の発言をされてます.しかし今のサイエンス型産業では,サイエンス的知見の多くは「過去の遺産」の袋に入れられることなく,使い捨てられているという気がします.すべてがそうであるとは言いませんが,多くの知見は研究者・技術者の懸命の努力にもかかわらず,短期間に消費され捨てられます.私の仕事の領域の情報科学では,特にそれが顕著だと思います.よく「パソコンは生ものだ」と言われます.3年経てばもう新しいソフトは動かないということがよくあります.こういうサイエンス的知見の使い捨てのシステムは,どこかおかしいなという気がしてなりません.

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